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NO.545 腸管免疫 その12 腸内細菌の種類とバランス

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私たちは無菌室で暮らさない限り、細菌と無縁ではいられません。
息をしても、食べ物を食べても、空気中に漂う無数の細菌を体内に入れています。
その入り口である口内は、細菌のたまり場。
唾液1ml中に棲息する細菌の数は、1000万個とも言われています。

それらの細菌は食物と混じり合い、食道を通過して胃に送られます。胃では、食物を消化するために胃液が出ます。
これは非常に強い酸です。その酸にやられて、唾液1ml中に1000万個もいた細菌は、1000個程度まで減ります。胃は、食物にまぎれて体内に侵入しようとする細菌を撃退する第一の「関所」。ここをくぐり抜けて小腸にたどりつく細菌は、ほんのわずかです。

小腸上部でも、さらに食物を消化するために、強いアルカリ性の胆汁などが分泌され、そこでまた細菌は減少します。しかし、そこも耐えた細菌は大腸に移り、今度は爆発的に数を増やして元気を取り戻します。
その理由は、大腸は細菌にとって非常にすみやすい環境だからです。大腸の主な仕事は、水分の吸収なので、動きがゆったりとしています。また食物の中には、消化しきれてないたんぱく質や脂肪も含まれ、細菌の格好のエサになっているのです。





そしてこの流れの結果が大腸に棲む500種類、100兆を超す細菌の数になるわけなのですね。
さてでは、いわば病原菌の宝庫のような場所を体内に持ちながら、私たちはなぜ病気にならずにすむのでしょうか。

それは腸内存在する乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌が、防波堤になって悪玉菌と闘ってくれているからです。


腸内にすむ細菌の数は、ほぼ一定に保たれています。
大人の腸内細菌のバランスは、かなり個人差がありますが、おおよそ日和見菌が全体の約70%、善玉菌と悪玉菌がそれぞれ約15%、善玉菌のほうがやや優勢だと、悪玉菌が暴れず、よい腸内環境が守られます。
健康を保つうえで大きなバックアップをしてくれているのが、私たちの腸内にすんでいる善玉菌。
そしてその代表としておなじみなのが、ビフィズス菌などの乳酸菌の仲間です。
ビフィズス菌や乳酸菌、腸球菌といった乳酸菌群は糖を発酵させて乳酸や酢酸をつくって腸内を酸性に保ち、外から侵入してきた有害な菌や悪玉菌の繁殖を抑えて感染を防いでくれます。多くの菌は、pH5以下の酸性の場所では生きられないからです。また免疫細胞を刺激する物質を出して、腸内での腐敗も抑え、免疫力を高める働きもしてくれています。
その他、ビタミンB群やビタミンKの合成にかかわったり、腸の蠕動運動を促して便秘を解消したりと大活躍なんです。
また悪玉菌によって作られたニトロソアミンなどの発ガン物質を吸着、分解する事もわかってきています。
善玉菌と悪玉菌がうまく「すみ分け」をしてくれれば問題ないのですが、どちらの菌も、常に自分の領地を拡大しようとたくらみ戦闘を繰り返しています。
一般的に善玉菌が増えると悪玉菌が減り、善玉菌が減ると、悪玉菌が増えるのですね。
もし、悪玉菌が増えてしてしまうと、不安定で病気の多い体になります。



それなら悪玉菌がなくなればいいと思う人もいるでしょう。
しかし、悪玉菌がまったく必要ないかといえば、そうではありません。悪玉菌という名が便宜上つけられてはいますが、悪玉菌の代表である大腸菌も実は消化を助けたり、ビタミンを合成したりと有用な面もあるのです。
それに悪玉菌がいなければ善玉菌も働きませんし、もし大腸菌をすべて排除したら、下痢などの悪影響を体に及ぼします。

ただ体調を崩して善玉菌である乳酸菌が少なくなると、大腸菌は必要以上に増えて有害物質を出すなどの悪さをするわけなのです。

つまりは、善玉菌と悪玉菌とがバランスよくすんでいることが非常に大切なのですね。
また一番数が多い日和見菌は、とりたてて善行も悪さもせず、そのときの状況に合わせて、強い方になびく菌です。





さてでは、それぞれの菌についてみていきましょう。

まずは善玉菌から・・・


善玉菌の代表、「乳酸菌」と「ビフィズス菌」の働きはほぼ同じですが、性格は若干違います。
乳酸菌は、糖類から乳酸を生産する微生物の総称。酸素があっても生きられます。
しかし、ビフィズス菌は、逆に酸素があると生きられないのです。

全ての動物の大腸内には固有の乳酸菌がすみついていますが、人間の腸内にもっとも多いのはビフィズス菌です。酸素に弱いため、大腸内の完全に無酸素状態になったところに多く生息し、活動しています。
ビフィズス菌はV字やY字に分岐した形をしていて、ラテン語で分岐を表す「bifid」という言葉から名付けられています。種類によって大きさは違いますが、一般的に幅0.3~1.5umほどです。
生まれたばかりの赤ちゃんの腸内はビフィズス菌でいっぱいですが、60歳を過ぎるころから腸内細菌のバランスが変化し、減少していきます。

そしてこれら乳酸菌のエサになるのは、なんといってもオリゴ糖。
人間の消化酵素で消化されないまま大腸に入り、善玉菌のえさとなります。甘味料のほか、はちみつや味噌、醤油、ゴボウなどに含まれています。
そして苦手なものは胃酸や熱など。
最近は胃酸に強いタイプの乳酸菌もサプリメントやヨーグルトで摂取することができます。

善玉菌たちは互いに力を合わせ、それぞれに分泌液を出し、混ぜ合わせることによって「有効物質」を作り出します。それがバリア網の役割を果たし、悪玉菌の活動をおさえて殺すほか、悪玉菌が生み出した有害物質を中和して、病気の根源を絶ちます。




次に悪玉菌・・・

腸の中で、おならや便の悪臭などのもとである臭いガスを発生させているのが悪玉菌。

常在菌(人間の体内にいる菌)である悪玉菌のほとんどは、病原性を持っています。腸の中にいるだけでは発病はしないのですが、菌に対する抵抗性や免疫力が低下したり、特定の悪玉菌が増殖すると病気になってしまいます。
悪玉菌の中で代表的なものは、ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌などがあげられます。
また「ウェルシュ菌」も悪玉菌の代表選手で、生まれたばかりの赤ちゃんの腸内にはいませんが、中年期以降急激に増え始め、それまで優位を保っていたビフィズス菌を逆転するまでになります。この菌は、人間や動物の大腸内にすんでいるのですが、下水や河川、海、耕地などの土壌にも存在しています。細長い棒のような形をしており、幅は約0.9~1.3umと言われています。

食生活の乱れやストレス、過労など、さまざまな原因でも善玉菌が減り、悪玉菌が優勢になります。
そうすると結果、腸内で腐敗が進んで腸内環境が悪化し、全身の免疫力が低下してしまうのです。

善玉菌の勢力が弱まり、悪玉菌が増え出すと一大事です。
大腸内では、食べもののカスに含まれるたんぱく質を分解し、アンモニア、アミン、インドール、スカトールなど、悪臭のするガスを産生します。
これらが血液に乗って全身をめぐると、肌荒れや頭痛、風邪をひきやすくしたり、心臓にまで悪影響を及ぼします。
また下痢、便秘の原因になったり、ニトロソアミンという発がん物質を発生させることもあるといわれています。
好物はたんぱく質なので、肉類にかたよった食事やストレス、不規則な生活習慣などによっても増えると言われています。




さてここまで、善玉菌と悪玉菌についてみてきましたが、一般に、体によい物質を出すのは善玉菌、悪い物質を出すのは悪玉菌と区別されていますよね。
みなさんは人間にとって良いのは善玉菌だから、悪玉菌はなくなればいいと思ってはいませんか?
実はその考え方は少し間違っています。

大腸菌の中にはビタミンの合成や感染制御にも関わっているものもあり、全てが悪玉とは言えないのも事実なのです。
また大腸菌は出産直後の乳児の体内に入り込み、乳児が細菌に対する認識ができる能力にスイッチを入れる役割も果たしています。このスイッチが入ることで、乳児は細菌などの外敵侵入者を見分ける能力を持つことができるようになり、免疫能力の基礎を築くことができるのです。

また単純に善玉菌と悪玉菌を区別できない菌もいます。
たとえば人間にとって有用なビタミンを作る「バクテロイデス菌」は、そこだけをとれば善玉菌。しかし他方では、発がん性物質も作っています。


このように悪玉菌は悪だけではないのです。

大腸菌など悪玉菌の餌は、便の中に残された栄養素ですが、乳酸菌などの善玉菌も負けじと餌である栄養素を必要として活発に動きます。
悪玉菌の大腸菌が腸内の栄養分を食べ始めると、乳酸菌も負けじと栄養分を食べるというように、お互いの存在があるから成り立っている面もあるわけです。
悪玉菌は、腸内でつねに善玉菌となわばり争いを展開しています。
この悪玉菌と善玉菌が、自らの環境を優位な状態に保とうと活発に増殖しようとしている状態こそが、腸内細菌の環境バランスがとれている状態といえるわけなのですね。


だから先程述べたように、悪玉菌がゼロの状態もよくない。一番良いのは善玉菌がやや多めのバランスなのです!
是非みなさんも除菌除菌と言わずに、菌と共存していくことを考えましょう。






腸内細菌のまとめ・・・


善玉菌(乳酸菌、ビフィズス菌、アシドフィルス菌、ガセリ菌など)

ビタミン、ホルモン、アミノ酸を生成する
老化を防ぐ
腸内フローラ(細菌叢)のバランスを整える
有害菌や病原菌の侵入・増殖・感染を防ぐ
免疫力を高め、病気になりにくい体を作る
食べ物の消化吸収、代謝機能を助ける
腸内を酸性に保つことで、便秘や下痢を防ぐ
腸の蠕動運動を促し、便秘を抑える
有害・発ガン物質の分解と排泄促進

※オリゴ糖や乳糖を利用して仲間を増やす



悪玉菌(ウェルシュ菌、大腸菌、ブドウ球菌など)

動物性たんぱく質を腐敗させる
有害物質を発生させる
炎症をおこしたり、発がん性のある物質を作る

※ たんぱく質を分解してさまざまな有害物質を作り出しながら増殖する



日和見菌(バクテロイデス、大腸菌(無毒株)、連鎖球菌など)

とくによい働きも、悪い働きもしない細菌
善玉菌が多い時はおとなしく、悪玉菌が増えると有害な作用を及ぼすことがある




いかがでしたか?

このように、代表的な腸内細菌は作用によって3種類に分類されています。
有用菌は消化吸収の補助や免疫刺激など、健康維持や老化防止などへ影響がある菌で、代表的なものにビフィズス菌や乳酸菌があり、健康維持や老化防止にいいといわれています。反対に有害菌はからだに悪い影響を及ぼすとされ、代表的なものにウェルシュ菌・ブドウ球菌・大腸菌(有毒株)があり、病気の引き金となったり老化を促進するなど健康を阻害します。また日和見菌は健康なときはおとなしくしているが身体が弱ったりすると腸内で悪い働きをする菌で、代表的なものにバクテロイデス・大腸菌(無毒株)・連鎖球菌があるのです。

現代人の生活は、特に腸内を悪化させやすい環境にあります。
年齢でも腸内細菌のバランスに変動を与えますが、それ以外の要因でも腸内細菌のバランスが変わってきます。飲酒、ストレス、偏った食生活により、善玉菌が減り、悪玉菌が増えます。また、抗生物質の投与などがあると、腸内細菌が減り、そのときにバランスの取れた食生活をしていなければ、善玉菌よりも悪玉菌が多い状態に変わってしまうのです。
若年者でも、食生活の偏りやストレスなどで、高齢者に近い腸内環境となりうると言えます。
また風邪や口内炎にかかっている人は、ビフィズス菌が減り、大腸菌や腸球菌が増えていますし、便秘や下痢の時にも同じ傾向を示しています。
その他、抗生物質、ステロイドホルモン、免疫抑制剤、放射線治療などにより、病原性菌を増加させることが分かってきています。



腸内細菌のバランスをいかに保っていくということが健康のポイントになりそうですね^^。



小菅一憲

CHIROPRATICA|健康の素晴らしさを伝える治療院


C-Magazine|カイロプラクター小菅一憲が提供する健康情報発信基地

by chiropratica | 2014-11-11 10:18 | 腸管免疫


カイロプラクティック理学士/サプリメント指導士のカラダと食を考える日記


by chiropratica

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