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NO.282 低血糖症 その6 「低血糖症になりやすい人」

NO.282 低血糖症 その6 「低血糖症になりやすい人」_b0195635_23121237.jpg


前回のblogで、低血糖症でおこる様々な症状について話してきましたが、同じような食生活をしていても低血糖症になる人とならない人がいます。
つまり、低血糖症になりやすい人と、なりにくい人がいるということなのです。

脂質代謝研究で有名な、アメリカのバリー・シアーズ博士によると、全人口の25%の人は炭水化物に「非常に敏感」で、いつでも炭水化物に過剰なインスリン反応を起こすといいます。そして別の25%の人は、その逆で、精製された炭水化物を食べてもインスリンが過剰に分泌されることはなく、それによって低血糖症になることも、肥満になることもないそうです。
残りの50%は両者の中間であり、一部の人は炭水化物に対して正常な反応を示すけれども、人によっては(または炭水化物の質によっては)インスリンのレベルを上昇させることがあるということです。

さて、このことからわかるのは、人口の半分以上の人たちは糖分のとり方に気をつける必要がある、ということです。そう考えると、現代人にいままで述べてきたような症状に悩まされ具合が悪くなっている人が多いということも納得できると思います。

またエネルギーの代謝タイプによっても低血糖になりやすい、なりにくい人がいます。
一般的にたんぱく質を燃やしてエネルギーを作ることが得意な人は、糖の燃焼速度の速いタイプ(Fast Oxidizer)なので、低血糖になりやすく、日本人に多い(70%くらい)タンパク質と炭水化物代謝の中間、ミックスタイプの人でも炭水化物傾向になりやすい人ほど、血糖のコントロールが難しく低血糖になりやすいと言われています。

このように考えていくと、低血糖症はあまり知られていない病気ですが、潜在患者数は相当数に上ると思います。それもそう、アメリカでは2000万人~4000万人の患者さんがいると言われるくらいなのです。
また2006年の心身医学会の発表では、治療開始後2年以上経過しても月1回以上のパニック発作が出現するパニック障害患者のうち、問診で低血糖症が疑われた20名(女性15名、男性5名)のうち19名が、5時間の糖負荷試験で低血糖症であると診断されたそう。
たしかに、私がカイロプラクティックで診察していても、自分で低血糖症だと気づいていない方がほとんどですし、医療機関で自律神経失調症や精神障害などと誤診されているケースも多いので、隠れ低血糖症はすごい数になるでしょうね。





さて、ではどのような人が低血糖症になりやすいのでしょうか?

やはり、一番の原因は「長期にわたる精製された糖質の過剰摂取」をしているということ。
精製された糖質とは、砂糖やブドウ糖果糖液糖、それらが入ったお菓子やスナック、清涼飲料水、精製された穀物(白米、パン)などです。
ただ、この砂糖やブドウ糖果糖液糖がくせ者で、様々な加工品、そして調味料に入っているのです。みなさんも注意して原材料を見てみて下さい。これ美味しいよね!と思うものには必ず入っていますから。笑。
こうなると、意識して心掛けないと私たちの口の中には、どんどん精製された糖質が入ってきていると思いませんか。
知らぬ間に、なんとなく毎日身体がだるい、疲れやすくなったと感じる、身体のどこかが調子悪いといった症状があらわれ、そしてある日急にドーンと体調が悪くなり、病院に行くと検査では何も出ず、自律神経失調症だと言われる・・・・。そんな風に低血糖症になってしまっている方も多いのです。

怖いものです。

もちろんこういうものを食べ続ければ、誰でも低血糖症になるのかと言うとそうではありません。もちろん確実に体調は良くないと思いますが・・・。
低血糖症は、後天的な要因(糖質の多い食生活、不規則な生活、ストレスなど)のほかに先天的な要因がある人の方が発症しやすいといえます。たとえば、同じ食生活をしている人を比べてみた場合、ご家族や血縁の方に糖尿病がある人の方がよりインスリン過剰になりやすく低血糖症が起こる可能性が高いのです。低血糖症になりやすいかどうかは、遺伝的な体質も強く関係しているのですね。
また同じように低血糖になっても、体内環境が違えば必ずしも症状を起こすとは限らないのですね。血糖が急激に下がっても、十分に栄養が足りていて、それに対応できるような副腎機能や自律神経の働きがあれば、症状は起きないのです。




さて、先天的に低血糖症になりやすい体質には・・・


消化機能が弱い
貧血
膵臓機能障害
アレルギー体質
自律神経失調症
甲状腺機能障害
ビタミン依存体質


このような体質がある上に、精製された糖質を多く食べるような食生活が続くと、低血糖症になりやすいと言えます。
簡単に一つずつ見ていきましょうか。


<消化機能が弱い>
消化吸収能力が弱いと、タンパク質やビタミン・ミネラルなどの栄養素の吸収は落ちますが、糖分だけは吸収されるため、低血糖を起こしやすくなります。またタンパク質やビタミン・ミネラルなどの栄養素が不足すると、ホルモン分泌や自律神経のバランスを崩しやすくなります。また脳内でカテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリン)を抑えるようなセロトニンを産生できれば、それらのホルモンによる症状は抑えられますが、栄養欠乏ではセロトニンを作るための材料であるトリプトファン、ビタミンB6、亜鉛、マグネシウムなどが不足しており、カテコールアミンによる症状が引き起こされることになります。それ以外に、胃下垂の人は胃壁の弾力が弱いため、摂取した食物を消化しにくく、栄養不良や貧血、強いては低血糖症になりやすいかもしれません。


<貧血>
貧血状態では、腸粘膜細胞が酸素不足となるため、粘膜の再生が遅れ、エネルギー産生もよくありません。結果、消化吸収の流れがうまくいかなくなり、低血糖症になりやすいと言えます。また鉄は多くの酵素の材料でもあるため、タンパク質とともに欠乏すると酵素活性が低くなり、代謝の低下、エネルギー産生の低下による疲労や精神症状、頭痛、自律神経症状が出やすくなるでしょう。


<膵臓機能障害>
家族的に血糖調節がうまくいかないような方、体質的な膵臓機能障害を持っている方は低血糖症を起こしやすくなります。
インスリンレセプターの異常やインスリン抗体の存在、GTFの低下などにより、インスリンが効かなくなりそのため膵臓がインスリンを過剰に分泌し、疲れやすくなります。この体質の方が糖質過剰な食生活をすると、耐糖能異常をきたしやすく、低血糖症や糖尿病の発症につながるのですね。
知らない言葉が出てきたと思います。GTF。少し説明しましょう。
GTFとはグルコース・トレランス・ファクターです。日本語では、「ブドウ糖耐性因子」と言います。このGTFは、各細胞の中に存在している物で、簡単に言うと、インスリンと細胞を結合させるようにしています。インスリンは各細胞と結合して初めて、役割を果たします。ちょうどインスリンが鍵で、細胞の表面にある、インスリン受容体(レセプター)と呼ばれる部分が鍵穴と考えてみて下さい。インスリンという鍵が、細胞の鍵穴に差し込まれると、細胞のドアが開き、そのドアからブドウ糖が細胞内に入っていけるようになるわけです。こうやって細胞が栄養をもらうことができると同時に、血糖値が下がります。このように、インスリンと各細胞の表面にある、インスリン受容体が結合して初めて、正常に我々の体が機能するのですね。この糖が代謝される過程でGTFという物は、そのインスリンとインスリン受容体を結合させ、扉を開くようにさせている糖代謝の要とも言える成分なのです。
特に糖尿病の方は、このGTFが不足しています。



<アレルギー体質>
副腎は、喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、慢性関節リウマチなどアレルギーや炎症を抑えるために、抗炎症ホルモンであるコルチゾールを分泌しながら炎症を抑える働きをします。
副腎は血糖を上昇するときもコルチゾールを分泌するため、アレルギーがあると、全体のコルチゾールが足りなくなり、血糖調節機能を十分に発揮出来なくなります。
そのため、アレルギーのある方は副腎が疲れやすく、その逆に低血糖症の重症になるとアレルギーも発生しやすくなります。
また、インスリンは成分として亜鉛を含むため、インスリンが過剰に分泌されると、亜鉛不足になりやすく、鼻炎や皮膚炎などが起こりやすいといえます。


<自律神経失調症>
自律神経は、胃液の分泌、胃腸の蠕動運動、インスリンや副腎髄質ホルモンなどのホルモン分泌など様々な身体の働きに関与しています。
低血糖という緊急時には、視床下部(脳の中枢)は積極的に活動します。視床下部より刺激を受けた交感神経が副腎髄質を刺激して、副腎髄質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)などが分泌されます。しかし、自律神経失調症では、アドレナリンやノルアドレナリンの分泌がスムーズにいかなくなることがあります。
またインスリンは副交感神経によって分泌が促されるので、副交感神経が強い状態だとインスリン過剰分泌が起こる可能性があります。


<甲状腺機能障害>
甲状腺ホルモン、特にサイロキシンは小腸からブドウ糖の吸収を促進します。なので、甲状腺機能障害では低血糖が起きやすくなります。
ちなみ甲状腺機能亢進症では、食後の高血糖および反応性低血糖症が、甲状腺機能低下症では、食後、ブドウ糖値が上がらない無反応性低血糖症が起こりやすいようです。


<ビタミン依存体質>
低血糖症はビタミン依存の体質とも呼ばれています。TCAサイクル(以前のblog参照)をはじめ代謝を行うためには酵素が必要となりますが、酵素は、補酵素(ビタミンBやビタミンCなど)、や活性化剤(鉄、亜鉛、マンガン、銅、コバルト)の助けなくして働くことができません。糖質の代謝には、その中でもとくにビタミンB群が重要になってきますが、低血糖症になりやすい人は、酵素の働きのために、補酵素として普通の人の10倍から数十倍のビタミンを必要とする体質の人が多いと言われています。
普通の食生活をしているのに、朝起きられない、疲労が蓄積しやすいなどエネルギー不足を訴える人はビタミンB依存体質を疑うことになります。




いかがでしたか?
これらが先天的な体質で「低血糖症」になりやすい人の例です。


なんども言うように、低血糖症を引き起こす最も大きな原因は、「長期にわたる精製された糖質の過剰摂取」です。
人間には、血糖値を適当な値に保つメカニズムがあります。もし血糖値が高くなり過ぎたら、膵臓のランゲルハンス島というところからインスリンというホルモンを分泌します。インスリンはブドウ糖を細胞内に送り込んで、血糖値を調節します。
逆に血糖値が低くなりすぎると、脳は視床下部–下垂体を通じて、副腎や甲状腺に指令を送り、ホルモンを分泌させて血糖値調節を行います。  
これらの内分泌腺が正しく機能している時は、血糖値は正常に保たれます。またある程度の無理をしても身体は処理する能力を持っているのです。
ですが、現代の食生活はまさに糖を過剰摂取するような構造が出来上がっており、膵臓に負担をかけざるを得ない食事と言えるのではないでしょうか?
低血糖症は、最低半年以上、膵臓に負担をかける食生活をすると起こりやすくなるので、日本人の誰でも注意が必要ということですね。



さて、最後に糖質の過剰摂取以外にも注意すべき点を話しておきましょう。



○アルコール、タバコ、カフェインなどの過剰摂取

アルコールは分解されてブドウ糖となり、膵臓に負担をかけます。また腸からのビタミンB6の吸収を減らしてしまいます。
タバコ、カフェインなども要注意。カフェイン類は副腎を刺激して、血糖値を上昇させてしまいます。

○過食

過食は血糖値の上昇を起こしやすいので注意しましょう。とくに精製された炭水化物は膵臓に負担をかけます。

○ストレス

ストレスは血糖調節に関わる副腎を疲労させ、血糖コントロールがうまくできなくなります。風邪やアレルギー、睡眠不足、外傷、炎症性疾患なども同じように副腎を疲労させます。副腎は、グリコーゲン分解や新糖生を促進するため、ストレスによる副腎負担がある場合、機能が低下し、2次的に低血糖症を誘発することがあります。

○ビタミン、ミネラルの摂取不足

低血糖症の方は、必ずと言っていい程、栄養欠乏の方がほとんどです。代謝に必要なビタミン・ミネラル、またホルモンの材料であるタンパク質などが低下している場合、低血糖症を起こしやすくなります。
特に糖質の過剰摂取はビタミンB群を消費するので、エネルギー産生がうまくいかない、脳内ホルモンのバランスを崩しやすいなどの状況を作ると言えるでしょう。



みなさん低血糖症になりやすい人、なりやすい体内環境など、理解して頂けたでしょうか。
低血糖になるような食事をしていても、それを調節するのに十分な体力があれば、症状が出てこないということからもわかるように、低血糖症の症状が出ているような方は、大抵いくつかの原因が重なっている場合が多いです。
アレルギー体質の人で、炭水化物よりの食事をしていて、さらに仕事で長期にストレスがかかった時に症状が出始めた等・・・。

また小さい頃から、低血糖症の人の場合はその状態に慣れていて、それが普通の状態だと認識していることもあります。
治ってから初めて体質も性格すらも変わり、自分自身に驚くことすらあるのです。

現代人には是非、低血糖症についての知識を持っていてもらいたいものです。



小菅一憲

CHIROPRATICA|副腎疲労専門カイロプラクティック


C-Magazine|カイロプラクター小菅一憲の治療実績




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by chiropratica | 2011-10-31 00:10 | 低血糖症


カイロプラクティック理学士/サプリメント指導士のカラダと食を考える日記


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