NO.77 牛乳 milk 「乳糖不耐症 ~牛乳の糖質による消化器症状~」

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世界の成人人口の70%は牛乳中の糖質「乳糖」を分解できません。

牛乳を飲むとお腹がゴロゴロして、すぐ下痢をしてしまったりしませんか?
また胃痙攣をおこしたり、腹部膨満感があらわれたり・・・

その原因こそが、実は「乳糖不耐症」と呼ばれるものなのです。


「乳糖」とは、牛乳に含まれている糖質(炭水化物)のことです。乳糖は二糖類で、ブドウ糖とガラクトースという二つの単糖類から構成されています。
乳糖は、乳腺の腺細胞だけでつくられます。したがって、乳糖を含んでいる物質は哺乳類の乳汁の他には存在しません。乳糖やその他の糖類をいっさい含まない乳汁を分泌する哺乳動物は、アシカ、アザラシ、オットセイ、セイウチだけです。1リットルあたりの乳糖の含有量は、人乳で約75g、牛乳で約45gです。

牛乳を飲んだ後で、乳糖が腸管から吸収されて血液に流入するには、二つの単糖類にまず分解されなければなりません。それには、乳糖を分解する酵素である「ラクターゼ」が必要になります。ラクターゼは腸管の上部の細胞に存在し、それが最も多く集まっているのが、小腸の中ほどにある空腸と呼ばれる部分です。

人間の母乳にも乳糖が含まれているため、赤ん坊のときは誰でもラクターゼを持っています。ラクターゼの活性がはじまるのは妊娠第三期(7ヵ月以降)の胎児の腸管の中で、活性が最も盛んになるのは出生直後と言われています。しかし、生後1年前後の離乳期からラクターゼの活性が弱くなりはじめ、成人になるとラクターゼがほとんど活性しなくなります。


摂取する乳糖の量が多くて腸内でのラクターゼの処理能力を超えると、乳糖は消化されないまま大腸に運ばれます。未消化の乳糖が大腸に到達すると、2つのことが起こります。

①大腸に普段から生息する細菌に乳糖が反応します。
細菌は乳糖を発酵させて、ガス、二酸化炭素、乳酸に変化させます。

②乳糖の分子は浸透圧作用によって腸管内に水分を引き寄せます。
その結果、腸管内にたまるガスと水分の量が増えます。

ガスと水分の組み合わせは、腹部膨満感、痙攣、げっぷ、放屁症状、そして水様性下痢の原因となります。

牛乳を飲んでお腹を壊してしまうメカニズムはこういうことだったのですね。



1965年、ジョンズホプキンス大学医学部の研究グループが、被検者となった白人の15%、黒人の70%が乳糖を消化できないことを発見し、これをキッカケに世界中の人々を対象とした調査が行われ、おどろくべきことがわかりました。

人類の大多数は乳糖不耐だったのです。

ほとんどの子供の小腸におけるラクターゼの活性は、生後1年半から4年の間に徐々に低下します。これは成長過程における正常な生理的変化です。
これと同じ現象は、離乳期に至ったほとんどの哺乳動物にもみられます。
この点では人も他の哺乳動物とまったく同じなのです。


生存のために牛乳に依存しなければならない部族は、自然淘汰の過程でラクターゼの分泌を維持する突然変異を起こす確率があります。また北欧のごく一部の人々はラクターゼを合成できる遺伝子を持っています。しかし、世界のほとんどの地域の人、特にアジア系やアフリカ系の人(有色人種のほとんど)が成人になるとラクターゼを作る働きが弱く、これらの人種の80~90%が乳糖不耐症であることが明らかになっています。


通常の離乳期を過ぎても、牛乳のような乳糖を含む食品を摂取するのは明らかに自然の摂理に反しているのかもしれません。
ラクターゼの欠損が成長過程における一般的なパターンだとすれば、乳児期を過ぎても乳糖を消化できる人はかなり例外的な存在といえるのではないでしょうか。


健康な成人における乳糖不耐の割合は、アメリカの白人で8%、黒人で70%、日本人では85%にのぼります。

日本人のほとんどがこの「乳糖不耐症」なわけですね。


こんな話もあります。
乳糖不耐という問題が認識されていない時代、途上国への粉ミルクの輸出が開始されたときのことです。
粉ミルクがはじめて南米諸国に到着した後で、現地住民が粉ミルクに水を加える作業を注意書のとおりに実行し、おいしく飲んだ後で、腹部の痙攣と下痢がどの村にも大量に発生したのです。
現地の反応は、「またしてもアメリカ帝国主義の陰謀だ」というものでした・・・。

有色人種のほとんどが乳糖不耐症なので、これは当然でしょう。
(Flank A.Oski,M.D. DON'T DRINK YOUR MILK 引用)


「乳糖不耐症」のために牛乳が苦手な人でも、大丈夫な乳製品があります。
それはヨーグルトやチーズ。
なぜかというと・・・
細菌の力を借りることによって牛乳を発酵させてヨーグルトやチーズにすると、乳糖の多くを細菌がブドウ糖とガラクトースに分解してくれるので、乳糖による問題は発生しなくなるからなのですね。




牛乳を飲んでお腹がゴロゴロしてしまう方。
牛乳を飲んで腹痛、おなら、下痢が起こる方。
このような人は乳糖不耐症です。
そしてその症状は「あなたは間違ったものを食べている」という自然界の警告なのかもしれません。

成長過程において、乳糖を分解するラクターゼの低下が自然な生理的変化であるのならば、その反応は正常とも言えます。
成人で乳糖を分解できないのは異常ではなく、当然なのです。

乳糖不耐症の人が牛乳を飲むと、栄養素の一部は吸収されず失われる可能性のあることが複数の研究で示唆されています。そうなると未消化の糖質からエネルギーを摂取できないだけでなく、下痢のためにタンパク質まで失われるおそれがあります。またせっかくカルシウムを摂るために牛乳を飲んだとしても、それが吸収されず排泄されてしまうので意味がありません。


乳糖不耐症の人はとくに「牛乳」は飲まない方が賢明かもしれません。

そしてお腹をよく壊してしまうお子さん。
もしかしたら、乳糖不耐症が関わっているかもしれません。
子供の腹痛はかなりよくある現象です。
全体の一割の子供が「小児再発性腹痛」と呼ばれる症状を経験していると推測され、その子供たちを対象にした研究では、その約三分の一の子供の腹痛が乳糖不耐に起因しているといいます。
牛乳を飲むことが良いという認識だけで、給食に毎日出たり、積極的にすすめられたりしますが、これは子供の健康を害するだけでなく、アレルギーの元になる可能性すらあります。


人類の大多数が「乳糖不耐症」であるということ。
これはまぎれもない事実なのです。



小菅一憲

CHIROPRATICA|健康の素晴らしさを伝える治療院


C-Magazine|カイロプラクター小菅一憲が提供する健康情報発信基地

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by chiropratica | 2010-11-19 07:27 | 牛乳の話


カイロプラクティック理学士/サプリメント指導士のカラダと食を考える日記


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